おとなの食育 NO.27

2021年初春を寿ぐ

宇宙からのエール



困難なストレスから回復する力

目新しい言葉にすぐ反応してしまうのは職業病ゆえだが、免疫用語の「ホメオスタシス(恒常性)」とともに、現在最も意識すべきキーワードが「レジリエンス」。
 実は息子「小山宙哉」が『宇宙兄弟』執筆にあたって、NASAでの取材に快く応じて頂いたのが「野口聡一」宇宙飛行士。昨年11月16日、新型宇宙船に搭乗した3人の仲間と、コロナに打ち勝つ願いで機体に命名されたのが「レジリエンス(resilience)」。心理学の用語で「困難から回復する力」をいう。
 元々はストレス(stress)とともに物理学の用語らしい。ストレスは「外力による歪み」を意味し、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」として使われる。「脆弱性」とは反対の概念で、困難なストレスに対する「自発的治癒力」の意味。精神的回復力や、抵抗力、復元力、耐久力など、「積極精神」に基づく「肯定的な未来志向」や「自尊心」などの因子が高いほどレジリエンスが高まるとされている。
 約半年間ISS(国際宇宙ステーション)に滞在し、iPS細胞を用いた実験などに取り組みながら、地上の災禍にエールを送り続ける野口さんたち宇宙飛行士に、私たちも地上からレジリエンスを信じて“言霊(ことだま)エール”を送り届けたい。


宇宙日本食がレジリエンスを高める

今回、ISSには欧米の飛行士でも食べやすくした日本食が別便で送られる。おにぎりやカレーのほか、愛媛の干物会社が5年がかりで開発した骨まで食べられゴミもゼロの「スペースまるとっとアジ(燻製塩味)」。JAXA認証まで8年がかりの「ちりめん山椒」(小豆島産)、日清食品焼きそばU.F.Oを進化させたお湯吸い切りタイプ麺、唐揚げのフリーズドライや、福井県立若狭校が開発した「サバ醤油味付け缶詰」「亀田の柿の種」などが輸送されるとか。

ごはんの国の豊かな食べもの。
米、麹、大豆、味噌に感謝。
国産大豆で自給率も上がってほしい。

いくら過酷な訓練を積んでいるとはいえ、あの窮屈なISSでの半年もの長期滞在。ストレスを抑え、リフレッシュできるのが宇宙食。野口さんにはぜひ正月の餅を食してほしい。雑煮やおろし醤油、海苔巻き、きなこ餅…餅は日本人の力の元。和製ソウルフードはスペースフードにもってこいだ。
 僕が考案したのは餅巾着ならぬ、レジリエンス「いなり餅」。切り餅(丸餅はヨコに半切り)を一晩塩麹に漬け置き、いなり寿司の揚げで包んだもの。一緒に味噌やチーズ、あおさなどアイデア次第。もっぱらおでん種とか鍋用だが、揚げ自体に味付けして宇宙食にできないものか?55歳の野口さんにはきっとパワーの源になる。ほかにも梅干、納豆、漬物…宇宙食も、困難なときも日本食で元気に。そんなことに思い馳せつつ、「いなり餅」でレジリエンスの願力を養う。今年もみなさまのご健勝を祈念して…

〈文責〉コピーライター 小山寅哉

創作「いなり餅」のねばりでレジリエンス・アップ!