(シルク21)3月17日 塩水選
方法は名前の通り、一定の濃度に設定した塩水(JA大阪北部では硫安を使用します。理由は後ほど説明します。)に籾を入れ、浮いた籾を掬い取り、沈んだ状態の籾と分けます。浮いた籾は、実の入りが悪かったり、病気などに感染している危険性があるんです。ですから沈んだ、実がいっぱい詰まった元気な籾だけを使用して苗を育て、農家さんへ届けます。
では、実際の作業を見ていきましょう。
① 水槽に硫安を入れ濃度の調整を行います。
水を張った水槽に硫安を入れます。ここで、JA大阪北部が塩ではなく硫安を使用する理由を説明しますね。塩水だと塩水選に使用した後は廃棄するしかありませんが、硫安を使用すると液肥として使用できるんです。JA大阪北部では実習農園にて散布する液肥として活用出来るよう、今年から硫安を使用しています。とってもエコですよね。
② 実際に籾を入れ、浮いた籾を掬います。
理由は先ほど説明した通りです。元気な籾を選別します。
ちなみに、硫安の濃度は稲の種類によって違います。例えばうるち米ともち米(お餅にする米)では当然濃度の調整が必要です。
③ 別の水だけを張った水槽で、籾に付いた硫安の成分を洗い流します。
籾についた硫安の成分をしっかり落とします。
④ 重さを均一にし、袋へ入れます。
次の工程に移るため、重さをそろえ、袋の中に入れていきます。
⑤ 籾に付いた水気を飛ばします。
洗濯機の脱水を想像してください。遠心力で籾に付いた水分を飛ばします。通常はふたを閉めて脱水しますが、撮影の間だけ無理を言って開けてもらいました。
⑥ 60℃に設定したお湯に10分浸け殺菌消毒します。
60℃に設定したお湯の入った機械に10分浸け、籾を殺菌消毒します。籾の消毒は農薬を使用しても可能ですが、エコ農産物に指定されるため(使用後の薬液処理や環境への影響を考慮して、エコ以外の苗についても実施しています。)には、農薬の使用回数が厳格に決められています。手間はかかりますが、この方法で殺菌消毒することで、農薬の使用回数を1回減らすことが出来ます。
⑥ 60℃の温度と、10分の時間の理由。
ちなみに60℃と10分にもちゃんと意味があって、うるち品種の場合、60℃で籾に付いた病原菌を殺菌でき、それより低いの温度だと、十分に殺菌できないんです。また、時間も10分以上浸けると、籾の中の胚芽がダメになって籾が死んでしまうんです。温度と時間、両方をにらみながら慎重に作業を行う必要があります。
⑥ 作業中のひと手間。
お湯に入れて1分後に、籾の入った袋をゆすっています。これは、籾に泡が付いてしまうと温度が均一に伝わらず、殺菌消毒の効果が薄れてしまうため、ゆすって泡をとっているんです。
⑦ 10分たったら機械から出して、冷水で籾の熱をとります。
すばやく機械から取り出し、冷水で籾の熱をとります。そのままにしておいたら、発芽してしまう可能性がありますので、手早く冷ましていきます。
⑧ 水を張った水槽につけ、籾に水分を吸わせます。
水槽の中に丁寧に並べ、は種の作業まで十分に水分を吸わせておきます。
ここまでが、今回の作業です。田んぼ(圃場)での農作業に目を奪われがちですが、こうした丁寧な準備があってこそなんですね。
水稲苗をご注文いただいた農家さんのお手元に、安全で丈夫な苗を届ける為に、たくさんの工程を1つ1つ職員の手で行っていました。