おとなの食育 NO.4

「健康寿命」のためなら命がけ!

 

平均寿命にみる食文化

3人に1人の超高齢化時代、元気満々の人からは「絶対100まで生きる」という勇ましい声も聞く。日本は83.7歳(男女平均)で世界一(*1)〈2位スイス83.4、3位シンガポール83.1〉日本女性が断トツの86.8歳、男性はイタリアと同率6位80.5歳(パスタとうどんは同原料だから?)〔2016WHO(世界保健機関)統計〕

人類最長寿国だから、日本食が注目されて当然といえば当然〔ちなみにフレンチの国は9位(82.4)、「医食同源」中華の国は53位(76.1)〕 2060年には寿命が5歳延びて女性91歳、男性84歳との予測も。でも今の超高齢者とは明治~昭和初期、厳しい戦争時代の食糧難を生き抜いた世代。タンパク源は畑の肉(大豆)と魚。コメは乏しかったにせよ雑穀と野菜・芋類、今にすれば伝統食(=健康食)で飢えを凌いだ。肉類・乳製品などを食べ始めたのは60~70年以降。だから飢餓の苦しみ、食べ物の有難さ、命の尊さは体が記憶する。我慢や辛抱を強いられずに育った戦後世代では、その実感が乏しい。

戦後生まれの団塊世代以降、栄養が行き届いた分、戦前世代よりは体格も大きく若々しく見えるが、じわりと健康不安が忍び寄る。食の急激な欧米化、工業化に伴う高タンパク、高脂肪、添加物まみれの弊害とも背中合わせ、先進医療頼みは否めない。健康情報も混乱し、例えば「長生きしたけりゃ肉を食べるな」とか、一方では「炭水化物が人類を滅ぼす」とか、真逆の食療法がまかり通る。体に良かれと聞けば通販会社の誘導にはまり、サプリメントを次々試す始末。

 

健康寿命を延ばす食

「健康寿命」とは「自立した生活ができる期間」のことで、WHO健康寿命ランキングでも日本は世界トップ74.9歳)の座にあって、幾分かはホッとできる。(2位シンガポール73.9、3位韓国73.2、4位スイス73.1)

ここで注目すべきは、上位3位まで「コメ食文化」の国が占めている事実。アジアモンスーン地帯では、気候風土に則したごはん食が理にかなっている。3位の韓国には「薬食同源」の食文化があり、キムチなどの発酵食品は認知症予防にも良さそう。やはり伝統食を大切にする「まごコわやさしいヨ(*2)」が長寿食の原点なのかもしれない。

つまりは自然風土の生命力をいただいて免疫力を高め、自然治癒力を養うミネラルバランスの高い食べものこそが、病気が嫌がる食のようだ。

「健康のためなら命も惜しまず」とは笑止だが、世界一元気な長生き国民なら「健康寿命のためには命がけ」くらいが精進の励みにもなる。「食を愛し、人生を愛する」姿勢と、自分だけの命でなく「次代へ引き継ぐ命のため」には命がけという志で「健康寿命食」を日常化すれば、和食文化の価値はさらに高まるはず。

 

(*1)厚生労働省の平均寿命調査では男性80.98歳、女性87.14歳でいずれも過去最高を更新。但し香港をランキングしているため世界1位は香港で、日本は男女とも世界2位としている。

(*2)ま:豆 ご:ゴマ コ:コメ わ:わかめ・海藻 や:やさい さ:魚 し:しいたけ・茸類 い:芋類 ヨ:ヨーグルト・漬け物(発酵食)

〈文責〉コピーライター 小山寅哉