おとなの食育 NO.5

「いのちを育む」ために何ができるの?

 

「食」のショック

こどものいのちを育む「食育」のためには「おとなの食育」が大事…と思い至ったのは、まず食品添加物が蔓延する現実。遅きに失したと思いつつ、なるべく添加物の少ないものを選んではいるものの、普段の食生活にはインスタント、レトルト、冷凍などが便利さゆえに必需品となり、調味料まで含めると添加物はもはや避けられない。即席麺だけ見ても国民1人当たり、年間41.5食も常食している。〈(社)日本即席食品工業会 H.19〉

最近のショックといえば、スーパー、デパ地下の総菜類。「中食」といわれる常設コーナーは年々拡張されていつも盛況。つい最近まで、てっきり手作りと思っていた惣菜の多くが、実は工場生産品。なんとほうれん草のお浸しまでしっかり添加物浸けでした。みんな大好きポテトサラダには増粘剤、乳化剤、酸味料、安定剤、香料、着色料、酸化防止剤…単品で20種以上!幕の内弁当だと副菜が色々な分、1食に200種以上もの添加物大盛りの折詰。だから買わない、食べない、食べても気にしないしかないのでは!?

『なにを食べたらいいの?』(著者: 阿部 司)では「何種類もの添加物を同時に摂る状況は、動物実験されていない。実験は1種類の添加物でしか行われず、いくら安全性データであっても、あくまで1つの物質を動物実験した目安で、現実に1日300〜500種類も同時に摂った場合、どうなるかは誰にもわからない」そうです!

さまざまな添加物で調味・調合される、あらゆる加工食品は、こどもたちの「おいしい」という感覚を麻痺させ虜にする。それらは日常巧みに刷り込まれる癖になる味。ジャンクフードは、ハードドラッグ(麻薬)、ソフトドラッグ(酒・タバコ)に次ぎ、マイルドドラッグとまで位置付けられるほど、常習性が恐ろしい。そこで、阿部さんは「しょうわそうす」という食べ方を伝授している。少食(しょう)、和食(わ)、粗食(そ)、薄味(うす)。一汁三菜の伝統的和食なら、添加物ショックの健康不安もおさらばだと。

 

いのちの教育現場

「食育基本法」から10年が経ち、現状がどう変化しているのか、その成果のほどはまだまだ見えない。友人の元小学校教諭の話。食べものは全て「いのちあるもの」だから、生き物のいのちに「いただきます」と感謝して食べるんだよ—という授業にて。生徒から「先生、チョコレートはどんな生き物?」「ガムは?」「キャラメルは?」と、次々と質問を浴びせられ、冷や汗もので何とか答えを絞り出し、もうなかろうと思った矢先「先生、豚肉は?」と自信ありげな質問が…一瞬、教室が静まり、すぐその子はブーイングの的に。トレー入り豚肉も菓子類と同じ加工食品と思っていたらしく、クラスでも良くできる方なので、先生も啞然と。食育時間で起こった、嘘みたいなほんとの話。

自然から生まれたいのちのあるものが「食べもの」で、工場で生産加工されたものは「食品」と、最初から分類しておけば混乱せずに済んだのかもしれない。

次に教育現場の感動編。鶏卵の孵化から自らの手で飼育して、3ヶ月後の解体(屠殺)を体験し、育てた鶏肉を試食するまでのリアルな授業。福岡の専門高校、真鍋先生のドキュメント番組(情熱大陸2013年)。当時から賛否両論あったそうだが、「自分たちが授かったいのちは、さまざまないのちに支えられて生きている」いのちの本質を実学する。普通科の学校では得られない、いのちを体得できるこの授業は19年も続いているとか。おとなこそ学ぶ価値があるような、今後いのちの教育の質を高める「食からの教育改革」にエールを送って期待したい。

 

〈文責〉コピーライター 小山寅哉