おとなの食育 NO.37
「心の世紀」の「心の免疫力」
「食育」と「笑育」タッグで最強アンチエイジング
心の免疫バランスは笑いが保つ
4月号で「笑い」による免疫効果の一端を紹介したが、今しも人類から笑いすら奪いかねない難題が噴出。地球規模の異常気象や災害、終わりなきウィルス禍、世界を震撼させる侵略戦争、非人道的兵器や生物化学兵器、そして核。穏やかな暮らしは過去の幻想か、世界平和は絵空事か…それでも人々は生き抜くために、笑いを絶やさず歩み出す。今こそ「体の免疫」以前、それ以上に「心の免疫」(生命力の源)に気付かされた。
笑いが免疫機能に好影響を与えることは医学的にも明らかで「笑いこそ、もっとも高度に進化した、人間的な情動である。人は大脳皮質が発達したからこそ、笑うことができるようになった」。どんな困難に遭遇しても、人は再び一歩を踏み出し、笑って難局を乗りきる。心が折れようが、笑い飛ばして勇気の力を振り絞る。それが古くてもっとも新しい「心と免疫との心身相関」。「心と体の対話」という「体のもつ知恵」を明らかにするのが「精神免疫学」(*1)の世界。
そもそも人はなぜ笑うようになったのか。人は生後数日もすると、微笑みが自発的な表情としてリズミックな間隔で現れる。そして生後2〜3週もたつと自発性、リズム性を失い、刺激に反応して誘発されるようになる。はっきり笑いと判断できる表情は生後20週にみられるようになる。「はっはっは」と呼気の分節をともなう笑いは6ヶ月でみられるという。人類は脳の進化とともに、笑いに代表される免疫力と治癒力によって生命力を高め、今日の文明・文化を築き上げられたのだろう。
精神免疫学は、私たちの免疫機能が心の影響を大きく受けていることや、脳と免疫系とは、密接な関係を保ちながら生体の恒常性(ホメオスタシス)を維持していることを解明した。また近年、脳には脳独自の免疫システム(脳内免疫系)が備わっていることも明らかになっている。そして神経・精神疾患、アルツハイマー病やエイズ脳症の原因に関わることも推定され、ますますアンチエイジング(抗老化医学)に重要な役割を担うことになるだろう。
「食育」と「笑育」で心身一如の免疫力
心とは、生命のエネルギーが大脳を通して外部に現れたもの。逆に、心のエネルギーを高めることによって、大脳を経由して生命のエネルギーを高めることができる。心の持ちようが健康に大きく作用する。「信じる者は救われる」「よいことを思うとよいことがおきる」「笑う門に福来たる」といった昔からの言い伝えを、科学で立証できるようになりつつある。
東洋医学には、心と体を一体としてとらえ、全体のバランスをとって病を癒すという、「心身一如」の思想があった。しかも「気」が五臓を傷つけるという、現代のストレス学説に通じる疾病概念ももっていた。また自然治癒力を治療の中心に据えながら、心と体の結びつきを経験的に知っていた。「病は気から」とは、気が巡らず邪気が溜って病気となること。
気の流れを良くする最良のトレーニングが、「食育」ならぬ笑力を育む「笑育」だろう。
「笑い」こそ最大の心の免疫治療薬。だから顔の筋肉を動かしたり、頬をマッサージするだけでもいいそうだ。何か気晴らしをして、沈んでいるNK細胞を揺り動かすため、「しゃべる」のも効果的とか。話し相手を広く確保しておこう。相手がいなくても、独り言でもよし。毎朝、新聞の見出し全てを大声で読み上げるのが有効らしい。これで社会とのつながりが保たれ、知識・教養・漢字力が身につく。好奇心と意欲が湧き、脳全体も免疫系も活性化する。天野恵一氏(医学博士)が「最高のぼけ予防法」で「とっておきの長寿術」とすすめる。
笑いの第一歩は笑いに飢えること。ハングリー精神で笑えるネタを探す。ジョークが得意な人はいいが、駄ジャレも結構おもしろい。日々ユーモアのセンスを磨こう。僕の場合は遊びで「早口言葉」(*2)を考えて自分で試し、難しいのを人に試させ、笑いをもらっている。楽しく笑いを創造すれば、さらに心の免疫力がアップする。
参考 『「まじめ」は寿命を縮める「不良」長寿のすすめ』(順天堂大学医学部教授/奥村 康 著/宝島社新書)
*1「こころと体の対話/精神免疫学の世界」(神庭重信著/文藝新書)
*2「今回の原稿に合わせた最新「早口言葉」①「骨粗しょう症 手術障害訴訟勝訴」②「姫路のシメジと シジミのチヂミ」③「築地の辻つじに咲く ツツジの接ぎ木に ヒツジが次々頭突きした」3回続けて舌を噛んでも、痛みを忘れるほど笑えれば傑作。
