おとなの食育 NO.36
「アンチエイジング?」より「ウィズエイジング!」
抗いきれない加齢を開き直って受け入れる“前向きズボラ生活”
面白可笑しく“加齢”を笑えば
健康長寿が“華麗”に微笑む
「世間は自分を何歳くらいと見るだろう…」人が人目を気にする最大の理由。年齢より若く思われる分には悪い気はせず、老けて見られるのはいい気がしない。社交辞令で「お若いですね」とは、人を元気にする最善の美辞麗句。この高齢社会ではお世辞でも、遠慮なく使って年長者を元気づけるべきである。事実、私自身がそう言われると背筋がしゃんとする。5年ほど前、電車で初めて席を譲られたときは愕然と…。以来、シルバーシートには座らないようになった。
綾小路きみまろのネタに「一つ覚えて三つ忘れる中高年」や「言ったことは忘れ、言おうとしたことも忘れ、忘れたことまで忘れ」とか「クヨクヨするな、人間の死亡率は100%」などシニカルで、シニア世代にエールを送る爆笑ライブCDが、演芸分野で初のミリオンセラーに輝いた。生活実感の可笑しさを皮肉った毒舌まじりの痛快話芸は、日本人の免疫活性に大いに貢献したことだろう。
「話し、歌い、笑う」のはヒトに与えられた天賦の才。それが「夫婦連れ添い四十年、毎日口を開くのは薬を飲むときだけ」と、会話が少なくなれば、ますます笑うこともなくなる。この前、腹を抱えて笑ったのはいつ頃だったか。どんな話で笑ったか、笑い方すら忘れてしまった?ヒトにとって特に高齢者にとって「沈黙は金」ではなく、認知症行き近道きっぷの『沈黙は毒』となる。
しかも長引くコロナ禍、この世の会話は小声に抑えこまれ、笑い声も押し殺しながら苦笑するしかないマスク生活。これ以上、自粛を強いられ長引くと活力が衰え、多くの未病を抱える恐れもある。そこで声がくぐもらずに話しやすくて、歌がうまく聞こえる機能性マスクや、思わず笑えるデザインマスクを、どなたか特許取得される方はいないだろうか…世界中のウィルス対策と健康貢献でイグノーベル賞もノーベル賞も夢じゃない!?
齢を重ねるほど“痒い所に手が届く”
痛快人生を歩むためにも…
「アンチエイジング(*1)」とは医学的進歩を信奉し、“健康長寿は勝ち取るもの”という考え方。“加齢に抵抗して勝つ”という勇ましくも、涙ぐましい姿勢。当初のゼロコロナ対策がまさにアンチコロナだったが、すぐにもウィズコロナに転じた。将来にもウィルスは回避できないのだから、“前向きに共生する”新しい生活様式への模索に終りはない。“備えあれば憂い無し”で、あらゆる想定外の災害にも備えるのと同じ心構えが必要だ。
いくら老いと闘っても限界は必至だから「アンチ・アンチエイジング」であって、むしろ老いを受け入れて共生する「ウィズエイジング」の方がいさぎよい。孔子は「七十にして心の欲する所に従い矩(のり)を踰(こ)えず」と人道を諭したが、いっそ加齢を一笑して「古希となり関節コキコキ、痒い所に手が届かず」と、笑い諭す方が人生もっと愉しくなる。
大笑いすると気持ちが明るくなるだけでなく、短時間に免疫系を正常化させる効果がある。京都のルイ・パストゥール医学研究センターによれば、漫才などを見て、3時間ぐらいゲラゲラ笑ったあとのNK細胞(*2)活性化の速度は、ガン治療に使われている代表的な免疫療法の一つ、OK432を投与したより速かった。つらい時も苦しい時も笑うに限るのだ。
米国のジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏は、難病のAS(強直性脊椎炎)を笑い飛ばして治した人。『笑い、ユーモア、生への意欲が奇蹟をおこし、創造力が長寿をもたらす。よく効く薬だと信じ込むと小麦粉でも痛みに効くプラシボ効果』など、心と体が密接につながっていることを著した(*3)。
「何があっても、何が何でも笑ってみせる」という心意気が病気を遠ざけることができる。
食、排泄、睡眠、運動どれも体の免疫バランスを保つために必要。それ以上に心の免疫バランスを高めることが重要だ。それには普段から、ただ笑う習慣を身につけるだけでいい。心身ともにおおらかに、何事にも動じず悠々と過ごせば日々是好日、年々是好年。そしてできるものなら「生老病死」の四苦すべてを笑い飛ばせば、ウィルスもガンも敵ではなくなる。
参考 『「まじめ」は寿命を縮める「不良」長寿のすすめ』(順天堂大学医学部教授/奥村 康 著/宝島社新書)
*1「アンチエイジング」のエイジングは加齢。ヒトは受精の瞬間から加齢が始まる。アンチは反対・対抗・排斥の接頭語。アンチエイジングは老化に抵抗、対抗するという意味。加齢による疾患予防や治療は「抗老化医学」と呼ばれる。
*2「NK(ナチュラルキラー)細胞」は血液中の白血球で、リンパ球、顆粒球、マクロファージなどが免疫力をつかさどる。その主役がリンパ球の「NK細胞」で、これが元気ならガンやウィルスにも負けず老いも怖くない。
*3『笑いと治癒力』『続 笑いと治癒力 生への意欲』(ノーマン・カズンズ 著/岩波現代文庫)

見た目もクスリと同じサプリの形状