おとなの食育 NO.34

今年もどうか“体すこやか心やすらか”に

ムリせず、励まず、ぐうたら健康法がよろしいようで…



健康不安に蝕まれた「健康病」は心の現代病

「健康」とは“体がすこやかで心がやすらか”な状態をいう。元は古代中国の古典『易経』にある「健体康心」から生まれた言葉。幕末一八六二年(文久二)英語Healthの訳語として登場したのが始まり。江戸時代までの健康にあたる言葉としては「息災」「達者」「無事」などで「体にさわりのない状態」を続けるために、「養生」によって元気が衰えないよう戒めるゆるりとした“守りの健康法”だ。古今東西変わりはないが無病息災が何よりの幸せで、無難に過ごすために養生を心掛けた。一転して現代は健康を錦の御旗に、健康的なものなら積極的に取り入れ、健康を勝ち取るために躍起になっているのが時代の趨勢だ。
 健康科学が進歩したこともあるが、いつの間にか世は「健康第一主義」に洗脳され、健康情報に翻弄されっぱなしの目に余る状況。超高齢化社会は「健康寿命」を国民に要求し、私たちも病院の世話にはならぬよう、健康食品だ、サプリメントだ、やれ運動だと精を出す。いまや病気は自己責任で、健康は国民の義務となった。一昔前、禁煙できない人は自己管理できない、管理職に向かない人間と見なされた。同じ理屈で健康管理できない人は、自ら病を招くダメ人間と見なされる。これは何とも世知辛い世の中ではないか…
 こんな時代が生んだ気の病が「健康病」だろう。健康のためなら何でも試みる真面目な人が患う心の病ではないか。いろいろ健康食やサプリを試しても一向に好転せず、日々健康情報の洪水に溺れ、ますます不安がつのる。極端かも知れないが、多くの人がこんな状況に陥っている気がする。心当たりがあってもなくても、流行り廃りの健康法がどれほど多くの人々を虜にし、また絶望させてきたことか。私には関係ないと思われる方でも、胸に手をあて「自分は健康病ではない」と断言できるだろうか…


ムリせず続けられる身に合った「健康習慣」


 戦後の健康食第一号は「青汁」。「ケール青汁」は緑葉食運動となり栄養改善に貢献した。緑の強化食として「クロレラ」、「コンフリー」などが登場。インスタント食品隆盛の六十年代、緑黄色野菜不足を補うビタミン剤を皮切りに、栄養ドリンクの第一次ブーム。七十年代は成人病と肥満への恐れや食品添加物に対する不信感から、自然回帰志向の健康食が注目。ニンニク、椎茸、梅、クコ、サルノコシカケ、アロエ、霊芝、深海鮫エキス…そして元祖オカルト健康食「紅茶キノコ」が、科学的根拠すらなく体験談だけで人心を虜にした。
 八十年代、米国からサプリメントのルーツ「食べるビタミン」が到来。総合ビタミン剤から機能別にCやE を食べ分けるのが普通になり。「豆乳」がブームになったが、これは日本の伝統食ではなく、「ソイ・ミルク」の先進国は米国だった。栄養ドリンクはファッション化して第二次ブームに。さらに民間療法系から「酢大豆」が大ヒットした。九十年代ではテレビが一品健康食を喧伝。「ココア」ダイエット、「赤ワイン」ポリフェノール効果、「ゴマ」セサミンの抗酸化作用、「豆乳ダイエット」他、にがり、寒天、納豆、朝バナナダイエットなどが流行。そしていま「抗加齢(アンチエイジング)」旋風が吹き荒れている。※1
 最後に、昨秋から始めた自己流「健康習慣」をご紹介。朝起きる前、寝床で「寝ながら全身ストレッチ」。仰向き・横向き・俯きの3パターンを約10分。さらに座って、立って、歩きながらの『ながらストレッチ』を、体と相談しながらメニューを試案中。気軽にムリなく、ぐうたらな自分にもできる自己流がよろしい。
 もう一つは「白湯」健康法※2「表紙のごはん」の青木先生もなんと20年以上!も続けられている。沸騰させたコップ一杯の白湯を、さましながらゆっくりと飲む。フーフーとさますとき、眉間と両目に湯気がかかりこれが目覚めに心地よく効く。元々はアーユルヴェーダ医療に基づいており、毒出し浄化作用(=便通)はもちろん、心身のバランスを整えて自然治癒力(=免疫力)を高めるとか。他にも、光熱代なみに高い効能サッパリのサプリとも縁切りでき、寒い季節もぽっかぽか!“白湯さまさま”で、目出たしめでたし!今は朝の一杯だけだが、一日三杯が目安で、これは新習慣として大いに値する。どうかみなさまマイペースでより良き健康習慣を!


参考 :「体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか」(畑中三応子 著/ベスト新書)
※1「アンチエイジング」と「サプリメント」については次回2月号「おとなの食育」(NO.35)にて紹介
※2「病気にならない『白湯』健康法」(蓮村 誠 著/PHP文庫)

〈文責〉コピーライター 小山寅哉

カップに入った白湯