おとなの食育 NO.33
「便通」は「食通」に通じる一大事
快食・快便でより良き年の未来を迎えるために
いきなりですがウンチのうんちく
健康のための食育テーマは、何をどのように食すのか、ほとんど美味・栄養を探求する、入り口のことに限られた話ばかりだが、出口の排泄に関する「ウンチ話」は“臭いモノには蓋”でシャットアウトされているのが常識。しかし「食通」と「便通」の間には避けては通れない密接な関係性があるはずで、「おとなの食育」ではウンチともまじめに向き合いたい。
まず良い便と悪い便の違いは何かというと、水分含有量80%、食物繊維10%、食べカス・老廃物・腸内細菌が10%という割合が通常。この水分が90%以上だと便は形を失い下痢となり、70%以下だと固形化して便秘になる。下痢も便秘も異常事態だが、下痢は一種の毒出しでもあり、風邪のウィルスや食中毒の菌などを反射的に排泄する場合もある。しかし長引くと脱水症状や栄養低下によって衰弱する。一方、便秘は悪玉菌によって生じる窒素残留物を腸に留める。それが生活習慣病や難病につながってしまう。
良い便は黄色に近い色で、それは腸内が善玉菌により弱酸性に保たれているため。しかし悪玉菌が増えると腸内はアルカリ性になって、便は茶褐色から黒褐色に(*1)。腸内の腐敗が進むと、便もオナラのニオイも臭くなる。腸内環境は便の色で見分けられて、ニオイで嗅ぎ分けられる。さらに日本人の便量は1日にバナナ1本半くらいの約130g〜180g(形は太く長く水に浮く300〜400gが理想)。回数では、量が少なくても毎日2〜3回!が望ましいとされているのは、自分で健康診断できる、便はまさに毎日の“お通じ便り”だから。
腸内細菌にはビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」、ウェルシュ菌や大腸菌などの「悪玉菌」、どちらか多い方に変化する「日和見菌」がある。それぞれが人と共生関係にある必要な微生物。健康に良い腸内細菌の働きとは、善玉菌の活動。その善玉菌を増やす方法には2通りある。一つは「プロバイオティクス」で、ヨーグルトなどで乳酸菌を直接補充する方法。もう一つは「プレバイオティクス」で、食物繊維やオリゴ糖などのエサを腸内に補給し、善玉菌を増殖させる方法。人体最大の免疫臓器である「腸」を健康に保つ努力が必要になる。
良き便通が食通に通じる
健康的な便通を妨げているのは、間違いなく腸内環境の悪化にある。その原因は食の欧米化、肉食にある。日本人が一年で食べる肉の量が45〜50 kgと、この50年で15倍以上になった。その分、野菜や芋類など食物繊維の摂取量は半減して、一日平均15g程度。腸内は日本人も欧米人化し、ガンや糖尿病など多くの慢性疾患の急増に影響している。厚労省の栄養所要量では20〜25g。理想は50年前の30gとされている。(*2)
壊れつつある日本人の腸内環境を改善して、快便の役割を担うのは「食物酵素」と、この「食物繊維」をいかに多く摂取するかにかかっている。食物繊維には水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維がある。前者には熟した果物や海藻、後者は穀類や豆類、根菜類に多く含まれる。これらを昔ながらに多く摂ることが、腸内の欧米化を防ぎ、良き「便通」によってほんとうの意味の「食通」にたどり着くことができるのだ。
最後に便を便利に活かす提案をひとつ。日本人一人が人生80年のあいだに排泄する大便の量はおよそ8.8トンという。これを年平均すると110kg。国民全体で一体何トンになろう。私たちはその分量以上の食物を食べている訳で、昨今、食品ロスの問題も多いに気がかりではある。ウンチに話を戻すとSDGs推進のためにも、鶏糞、牛糞以上に、人糞のリサイクル活用がかなり有効的ではなかろうか。江戸時代では、近在農家から肥を求めて来たそうだし、大戦後もしばらくはあたり前に肥溜めで発酵利用していた。その発酵工程後に乾燥処理さえすれば衛生面でもなんの支障もないと思うし、なにより循環型の地球環境保全に大きく貢献できるはず。この時代にこそ選択すべき英知として、古来より眠っていた文明を掘り起こすべきだと考えるがいかがだろうか。
※1野菜や果物などアルカリ性食品を摂ると、腸内は酸性に傾き、吸収されると体液は弱アルカリ性になる。逆に肉、魚、牛乳、ハムなどの酸性食品を摂ると、悪玉菌が繁殖し、腸内はアルカリ性になり、それらが吸収されると体液は弱酸性になる。人体の不思議をまざまざと見る思いがします。
※2「大便通」知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌/辨野義己著(幻冬舎新書)
参考 :「『酵素』の謎」—なぜ病気を防ぎ 寿命を延ばすのか—(鶴見隆史著/祥伝社新書)

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