おとなの食育 NO.31

もっと「酵素のチカラ」を味方に

「いのち(=生きた酵素)」をいただく食とは



「酵素」ってどんな栄養素?


 酵素について学んでみようと、その概要から探ったものの、機能性やメカニズムに至っては複雑怪奇。なにせ生命活動の全ての領域で働いているから、まさに“神秘の世界”。
 そこで今回は、もう少し“食育”目線で酵素を咀嚼してみる。まず原点的な問いで「人間はなぜ食うか…」。“腹が減っては戦ができぬ”からでなく、エネルギーを得て生活するため。「生命の営み」のためだ。
 その主力エネルギー源となるのが三大栄養素の糖質、タンパク質、脂質。活動エネルギーや免疫エネルギーとなる。これにビタミン、ミネラル、食物繊維を加えて六大栄養素、水が入って七大栄養素。さらに最近注目のポリフェノールやカロテノイドなどのファイトケミカル(植物中に存在する、抗酸化力が強い天然の化学物質)を加え八大栄養素とされている。
 では酵素も栄養素なのか?近年の酵素研究は「酵素栄養学」(1985年米国E・ハウエル博士)に端を発しているが、それは量子力学・素粒子といった最先端科学の世界。酵素が触媒となって生じる化学反応によって、栄養素はエネルギー源や免疫源になる。酵素の働きで、栄養が滋養となるのだから、酵素は栄養素というより「滋養素」としてもいいのでは?
 現在確認されている体内酵素は2万種類以上。未知の部分が多く、その研究は発展途上。ただ断言できることは、体内酵素の量によって老化や寿命、未病・発病を左右する。しかも年齢とともに数量も活性も低下する。免疫力が20歳を境に、40歳で半減するのは、酵素製造能力低下の現れ。だからこそ食物酵素をいかに効率よく摂取するかにかかっている。


おとなの食育は“酵素愛”へのめざめ


 目減りする一方の体内酵素を補うためには、生きた動植物の酵素を上手く摂るに限られる。加熱によって酵素は失活する。幸い和食には古来より生で食べる刺身や鮨、火を通さない調理法で食物酵素を摂る漬物、微生物が酵素をつくる発酵食品の納豆や味噌など、改めて日本の食文化は「いのちをいただく」という酵素食に精通していたかのようだ。
 とはいえ昨今は大半が加熱・加工食品が主流、それに伴う添加物の増加は、異物を排除するために消化酵素がフル回転で消耗され、代謝酵素へのダメージも少なくないだろう。
 日本の酵素栄養学の第一人者である鶴見先生は、酵素食のポイントで生食6対加熱食4、譲っても半々のバランスを勧める。一日の野菜は400〜500g以上を目標に、半分以上を生食でという。ただし大根や椎茸など干した方が繊維やミネラルが増える、人参などは加熱で栄養が吸収されやすく消化も良くなる。半分弱の加熱食で、生食中心を理想としている。
 草食動物じゃあるまいし、毎日サラダばかり食べられない。そこで3つの方法①野菜・果物をジュースにして食物繊維共に摂る方法。(台所で眠っているジューサーを働かせよう!)
 ②「すりおろす」ことで食物の細胞膜を破って、酵素量が何と2〜3倍も増える!大根*、山芋、人参、生姜、ニンニク、蓮根、玉葱、果物ならリンゴ。(「酵素愛」のためなら、良質の金属製「おろし金」を入手しよう!使い慣れない「擂り鉢とすりこぎ」もこき使おう!と決意)
 そして③「酵素を発する」発酵食品。味噌、納豆、醤油、酢、梅干…チーズやヨーグルト、キムチやザワークラウト(キャベツの漬物)など…。個人的には塩麹漬にハマっているが、醤油麹とか夏は爽やかな酢漬けのびん詰めにトライして、どんどん酵素食にのめり込もう!

※大根おろしには100種類以上の酵素が含まれる食物酵素の宝庫。デンプンの分解にはアミラーゼ(ジアスターゼ)、タンパク質の分解にプロテアーゼやセテラーゼ、脂質の分解にはリパーゼが働く。ほかにも活性酸素を攻撃するカタラーゼ、がん物質分解酵素のオキシターゼも含まれている。


参考 :「『酵素』の謎」—なぜ病気を防ぎ 寿命を延ばすのか—(鶴見隆史著/祥伝社新書)

〈文責〉コピーライター 小山寅哉