おとなの食育 NO.30
「酵素」こそ生命そのものだった
〜「酵素」不思議の世界へようこそ〜
そもそも「酵素」ってなに?
まえまえから健康を維持するためには欠かせない大切なもので、食べ物からどんどん摂るべきもの。—とだけは認識していたが、なぜ必要でそもそも酵素の正体とはどんなものなのか、恥ずかしながら全く理解できていなかった。そこでまず辞書によると…
こうそ【酵素】エンザイム(enzyme)細胞内で作られ、生体内のほとんどの化学反応の触媒の働きをする、タンパク質を主体とする高分子化合物。特定の反応だけに働く特異性があり、酸化還元酵素•転移酵素•加水分解酵素•脱離酵素•異性化酵素•合成酵素に大別される。酒•味噌•醤油などの醸造、食品製造•医薬品などに用いる。
とあるものの、これだけではなかなか難解。酵母との違いも説明できない。他の参考書を紐解くと、エンザイム(酵素)とはギリシャ語で「酵母のなかにあるもの」という意味。酵母とは糖類を発酵させてアルコールを作る微生物。酵母菌:イースト(yeast)酒酵母•ビール酵母•ぶどう酒酵母•パン酵母など、それぞれ別種の固有の菌で、酵素とはまた別もの。
酵素のサイズはほぼ5〜20ナノメートル(1ミリの100万分の1)。球形でその形を頻繁に変え、絶えず動き回り、衝突して変化している。ほとんどの物質を代謝する人体最大の化学工場といわれる「肝臓」のなかの各細胞には数百種類もの酵素があり、なんと1秒間に100万回という高速で代謝(分解・合成)している。
人体は約100兆個の細胞で構成されていて、細胞1個あたり100万回の異なった化学反応を行っている。食べ物を消化・吸収すること、話すことも聞くことも、呼吸、まばたき、すべて酵素なしではできない。酵素が触媒となって生じる化学反応こそが生命の正体。酵素を定義すれば「タンパク質の殻に包まれた触媒的働きをする生命体」といえる。
生命の光「酵素」が救世主となるか
現在わかっている酵素は2万種類以上で、一人100兆個の細胞を作るために1万3000種もの酵素が使われている。また私たちの体内では、1日1〜2兆個の細胞が新生され、ほぼ同数の細胞が消滅している。体内酵素の働きには大きく2種類あり、新陳代謝を司るのが「代謝酵素」で、もう一方が食物をエネルギーに変える「消化酵素」。タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)だけでも9000種以上働き、人体・骨格、生命を維持しているという。
酵素にも寿命(耐用期間)があって、短いもので数時間、長くても数十日で消滅する。あるものは排泄され、あるものはアミノ酸に分解されて新しい酵素を作る原料に。一部分を入れ替えながら、絶えず新しい酵素を作り続けている。
この酵素製造能力にも限界がある。20歳をピークに、年齢を重ねるごとに少しずつ減り続け、40歳を越えると急激に減少し活性も低下する。免疫力や自然治癒力も20歳がピークで、40歳で約半分になるといわれ、酵素の製造能力と全く同じである。
人体にある「代謝酵素」(生命活動)と「消化酵素」(食物の消化)の2つを[潜在酵素(体内酵素)]と呼び、外部から取り入れる「食物酵素」(食物の消化)を[体外酵素]と分類される。エネルギーの産生や解毒、細胞の再生や遺伝子の修復など、酵素の仕事は生命活動そのもの。まさに神秘さと重要さゆえ『生命の光』(酵素研究の祖エドワード・ハウエル)と称される。
人類はいま未知のウイルスとの遭遇で、これからどう打開していくのか。共生の道を進むにしても、「未知の酵素」を早く解明し、生命力の進化を高めなければならないだろう。
参考 :「『酵素』の謎」—なぜ病気を防ぎ 寿命を延ばすのか—(鶴見隆史著/祥伝社新書)

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