おとなの食育 NO.28

暮らしに「自然」を取り戻そう



「旧暦」の生きる知恵を活かす


 昨年の冬至12月21日付朝刊で目を引く見出し「ウグイス初鳴きなど観測終了『消える季節の指標』」という記事。気象庁が70年近く続けてきた季節の訪れを示す動植物の観測の大部分が昨年末で終了となった。セミ類の初鳴きだけでも8種目。栗、柿、桃ほか(木の発芽、開花、満開、落葉)が19種目など計51種目もの動植物観測が廃止。わずか6種目※1のみ植物観測は続けられるとか。個体種の減少や温暖化の影響が原因で、国として必要不可欠な業務は「予報」より「防災」への移行をはかるため。ただ多くの人が生物季節に鈍感になると、文化の喪失にもつながりかねないという意見もある。
 気象庁がこんな観測を続けてきたのは、季節の変化に基づいた旧暦が天候予測に役立っていたからで、それらを検証し予報資料にするために必要だったのだろう。観測終了は残念だけど仕方ない。ならば異常気象のせいと嘆く前に、自然の営みに忠実に1300年もの間受け継がれてきた「旧暦」を見直し、生活に組み込んでいけば、自然と四季折々の豊かさを感じ取り、日々必ず有益となるはずだ。


「立春」二度目の新年を祝う


 中国の戦国時代に考案された「二十四節気」。太陰暦による季節のズレを正し、四季を正しく示すため、一年を十二の「中気」と十二の「節気」に分けて江戸時代から採用された。ただ「二十四節気」は中国の気候に基づいていて、日本の気候と合わない名称や時期もある。そこでそれを補うために「雑節」(土用、八十八夜、入梅、半夏生、二百十日など)という季節の区分けを取り入れたものが日本の旧暦。
 一年で昼夜の長さが等しいのは「春分」と「秋分」。一年で昼の長さが一番長いのが「夏至」で、一番短いのが「冬至」。僕は、その日を境にだんだん昼が長くなっていく「冬至」が、短くなっていく「夏至」よりは好ましく、これから日に日に暖かくなって心身に気が巡り始め、次第に希望が膨らむイメージを持てるから。
 循環農法で知られる赤峰勝人さんも、陰暦にそって種を蒔くとよいことを20年がかりでわかったそうで「人が生まれるのは満ち潮のとき、死ぬのは引き潮のときが多く、人体の名称に月偏が多いのも意味がある。地球上の生命はみな月の影響を受けていて、陰暦にそって作物を育てるのは理にかなったこと」という。※2
 さて今年も「立春」(2月4日頃〜2月18日頃)旧暦ではここからが本当の新年の始まり。「新酒もできて酒粕も出回る頃。体に活力をつけるため、酒粕と味噌を入れた汁物なども積極的に摂ること。春菊やれんこん、ふきのとう、イワシ、カレイ、ヒラメなど脂がのって美味しい季節」「『二十四節気』は季節と暮らしの目印。四季折々の変化を受け止め、自然の恵みに感謝する。旬の食材を食べることは、体を元気に、心を和ませる」という“和食育”を広げる野崎洋光さんの言葉。※3

〈文責〉コピーライター 小山寅哉

二十四節気「立春」の七十二候「ウグイス鳴く」



※1 ウメの開花、サクラの開花・満開、アジサイの開花、イチョウの黄葉・落葉、カエデの紅葉・落葉、ススキの開花(昭和30年から続けてきたサクラの開花予想は平成21年に終了している)
※2 赤峰勝人 著「ニンジンの奇跡」畑で学んだ病気にならない生き方(講談社+α新書)
※3 野崎洋光 著「体が喜ぶ 二十四節気の料理帖」(光文社知恵の森文庫)