おとなの食育 NO.26
「自然の豊かさ」が「人間の豊かさ」
自然が豊かでなければ 人間は豊かになれない
自然と共に生きるために
今年は東京2020オリンピック・パラリンピックで希望あふれる幕開け。それが青天の霹靂、見えないウイルス感染の猛威に阻まれ、聖火は風前の灯火。開催の可能性も予測不能。想定外、思いもよらぬ災禍が蔓延する世界規模の緊急事態。天災・人災、とき・ところかまわず、未曾有の天変地異は、必ず起こりうるという覚悟で生き延びるしかない。
確かに自身も常々「諸行無常」をよすがとしているものの、ここまで過酷な現実に直面し、為す術もないのは茫然自失、希望は絶望に一変する。そんな危機感を思い知らされた一年でした。また磐石かと思われた長期政権も道半ばで幕切れ。ただ新らたな指針で、温室ガスを2050年までに実質ゼロの脱炭素・グリーン社会を目標とし、国連では「核兵器禁止条約」が50カ国の批准に達し、来年1月の発効が決定。それらは「日本創生」に向けて、一縷の望みをつなぐ年の瀬となりそうです。
1970年以降、この50年間で野生動物の個体数が3分の2以上減少。しかも毎年推定100万種が絶滅の危機にさらされている。人類の繁栄の裏で、自然の豊かさが著しく喪失していることを、ため息まじりで眺めていてよいものか。この地球自然の豊かさを護り継ぐことによってのみ、人はほんとうの豊かさを享受できます。他者に与えることで、自らの生命を護る「生物の共生原理」に真摯に向き合うべきでは。「自然との共生」こそ人類の努め(=生命のテーマ)ですから。
心の安らかに新たな時代を創生
昨年末(12月号)から新年号で「養生訓」を取り上げてから、早や一年。いま新たな日常となった「新しい生活様式」とは、まるで“心気を養う”「養生訓」の生活様式そのものです。「時宜(じぎ)にかなひ、事変に随(した)がふ」という自然な生活態度が今ほど大切なときはなく、これからも時代を超えて受け継がれていくものと信じられます。
また新しい医学的知見も取り入れながら、益軒先生の未病を防ぐ食養生こそ、人々の規範となる「新しい『食』生活様式」といえるのではないかと思われます。“養生すること”とは、「天地自然の原理」から「みずからを知る」ことから始まります。自分自身を知ることと、「心の安らぎ」から「体の安らぎ」を養生して得られる「心の楽しみと健康長命」。そのために何を、どう行い、食し生きることが正しいのか、“温故知新”と“夢と希望”で「新たな時代の創生」を実現したいものです。

自然と共に生きるために、自然のものを食す。
いのちの根源は一粒一粒に蓄えられた太陽エネルギー。
ごはんの国の豊かな食べ物に感謝して…