おとなの食育 NO.25

「腸内細菌」から創造したい「自然との共生」

 
生命誕生の母はバクテリア

この地球を宿主にするものとして、襟を正しておきたいことがあります。およそ46億年前に太陽や地球が誕生。地球に海が形成され原始生命が誕生したのは38億年前。哺乳類の誕生は2億5千万年前。遥かに下って1700万年前に大型の猿が出現し、直立2足歩行を始めたのは約700万年前。実はこの星の一番最後の新参者がヒトであって、生態系の頂点に君臨するなどと有頂天になっている場合ではないということです。

30億年前、地球に最初に現れた「シアノバクテリア」という細菌が話題に。酸素発生を伴う光合成細菌で、これによって地球上に初めて酸素と有機物が供給され、現在につながる生態系の基礎が築かれたということ。地球には未知のものも含めると3000万種もの生物がいるとされ、これらを育んだいわば生態系の原点であり、生命の母ともいえるのがこのシアノバクテリア(藍色細菌/藍藻)。乳酸菌や大腸菌とも近縁で、ヒトの腸内にも共生し、その仲間は高級食材や健康食品として市販されていたり、窒素固定能の性質から、水田の有機肥料にも用いられているとか。

 
「食物=生物多様性」とホメオスタシス

いかがでしょう、細菌に親近感を覚えませんか?反面、人類の輝ける近代文明は、急激な環境破壊や地球温暖化、異常気象による自然災害や人災ともいえるコロナ禍を招き、レッドリスト(絶滅危惧種)の急増で、生物多様性が危ぶまれています。まさに地球自体の恒常性すら脅かしかねない事態。「天地同根 万物一体」という禅語がありますが、天然資源を食いつぶすだけのこの文明は、いよいよリセットすべきときに直面しているようです。今こそ「自然との共生」を追究し、与えて得る「共存共生」の「生物学的文明論」※1を深化させることが不可欠ではないでしょうか。

新しい生活様式から創造すべきことは、「自然と共生する文明」であり、それは今を生きる私たちに委ねられています。ヒトが絶滅危惧種にならないように、今はとにかく生命力=免疫力を蓄えること!免疫のホメオスタシス(生体恒常性)を高める=「腸内共生菌を育む」ため、梅干、納豆、味噌、漬物、乳酸菌をせっせと摂取!「マゴコワヤサシイ」※2に「五色の食材」と「五味の食効」※3を抜かりなくいただく。質素な和食には「医食同源」の薬膳の知恵が込められています。五目飯、五目ずし、五目そば、五目豆。生物多様性の大事は「食物多様性」の大事。ヒトは天地万物と同源なのです。

※1「生物学的文明論」本川達雄(新潮新書)
※2「マゴコワヤサシイ」マメ、ゴマ、コメ、ワカメ(海藻類)、ヤサイ、サカナ、シイタケ(キノコ類)、イモ。【8月号/おとなの食育(NO.24)】
※3「五色の食材」【4月号/おとなの食育(NO.22)】「五味の食効」【6月号/おとなの食育(NO.23)】参照

 

〈文責〉コピーライター 小山寅哉

「表紙のごはん」食物多様性で免疫力を高める薬膳サムゲタン