おとなの食育 NO.22
「超・長寿社会」を生き抜く食養生を探る
健康寿命を延ばすのは日々の「食」
日本の100歳以上の人口が現在7万人を突破している反面、一昨年度の介護サービス利用は最多の518万人に達し、10兆円を超える規模。令和七年には団塊世代が後期高齢者に至り、その数はさらに膨れ上がる一方。私の母(89歳)も、要支援のリハビリに週1回通う身。足腰の痛みにあらがいながら、時に自転車で通院したり、歩行に杖を勧めるも、本人は全く聞く耳持たず。ただ「食」には気遣い怠らず、いたって気丈な暮らしぶりです。
加齢に伴い食が細り心身が衰える状態(健康と要介護の間)を『フレイル』(frailty=「虚弱、老衰」から)といい、寝たきりに近い生活になると、普通7年かけて落ちる筋肉が、わずか2週間で失われるとか。食が淡白になる栄養失調予防とフレイル予防で、しきりに肉食が推奨されていますが、それも何か短絡的な気もします。
母親にも良かれと、私が好みで作る常備菜には「ちりめん大根」〈ちりめん、アミエビ、大根葉/皮のゴマ油炒め〉、「大豆昆布」〈大豆、昆布、椎茸、人参の梅干・醤油煮〉、「椎茸昆布佃煮」〈刻み生姜、柚子仕込〉、「黒ご飯」〈黒豆、黒ゴマ、ひじき、牛蒡の黒尽しご飯〉、「黒ゴマ醤油」〈煎り黒ゴマに、醤油の香り付けふりかけ〉他、「煎り大豆と大根の黒酢・醤油漬」「塩麹漬」など。まだまだ、食養生としては端緒についたばかり。もっと広く健康料理の奥義を探り、長寿社会に寄与できればいいのですが…
「旬」の「一汁三菜」と「五色」の食養生
さて前号で紹介の永山氏(※1)が提唱する長寿食は「胡豆魚大参茶(ごまさかだいじんちゃ)」(「胡麻」若返り、「大豆」脳の老化防止、「魚」記憶力アップ、「大根」消化促進・ガン防止、「人参」ガン・老化予防、「緑茶」不老長生)と「五色健康法」の組み合わせでした。「五色」とは薬膳で黒、黄、赤、白、緑に分類される食材(※2図参照)。少量ずつ「長寿十五皿」のレシピを紹介し、五色をまんべんなく摂ることを奨めています。
氏が一推しの「ゴマみそ」(すりゴマに味噌、酒、三温糖、ゴボウのささがき少量を加え、弱火で練る)他、「アスパラのきんぴら」「マグロの葱和え」「ナタ切り大根サラダ」「鰯の梅煮」など、どれも簡単調理の惣菜ですが、最も出色は「五色卵焼」(ホウレン草、人参、椎茸、山芋、すりごま入り、大根おろし添え)。これには、ナルホド合点でした!昔からの「五目飯」「五目鮨」「五目豆」も同じ発想で、お馴染みの「肉じゃが」「筑前煮」なども、一菜で五色を満たすよう作られてきたものでしょう。普段から食べ慣れた惣菜にこそ、食養生の工夫がしみ込んでいます。
五色とは大変に思われるかもしれません。でも例えば大根は白と、葉の緑で二色、卵も白身と黄身の二色です。食材は部分でなく、「一物全体」を心がければ、一食五色の摂取は容易になります。食養生の要点は「旬」入りの「一汁三菜」に、「五色」のものをどう“いい塩梅”に摂り合わせるかですね。
「長寿食365日」(角川学芸出版)、「100歳食入門」(家の光協会)他。
効能分類を合わせて筆者が作成。
〈文責〉コピーライター 小山寅哉