おとなの食育 NO.11

充ち足りた生活とは
生きる力の食育とは

 

まだまだ若い70歳。 吉田さんは元は大阪八尾市職員だったとか…

合鴨農法は時代遅れか、先進的か

今年は記録的猛暑のせいか、やけに短かかった蝉時雨、蚊の活動低下、地上に出たミミズの大量死などが気がかりで。発生数も進路も型破りな台風、豪雨や地震、異常気象への不安がつのる一方、被災地の一刻も早い復旧を祈るばかり。
梅雨あけ未だの6月中頃、ところは岡山県新見市千屋花見の、のどかな中国山脈の中山間地。30年以上も合鴨農法を続けておられる吉田さんの圃場見学に伺った。5月末の田植えの後に放鳥し、7月末出穂までの二ヶ月間、合鴨たちが活躍する。一反当たり10羽、全部で8反(昨年の半分)だが約80羽の合鴨、アヒルのヒナたちだ。ヒナはまず好物の虫を食べ、虫が少なくなってから、ヒエなど雑草の芽をついばむ。合鴨の性質によるのか、働きの良否は毎年違いがあるそうな。
ヒナを狙うアナグマやイタチなどの電気防護柵は、自作のソーラーバッテリーとミニ水力発電器。タカやフクロウ、学習能力が高い? カラス対策で、防鳥糸が縦横に張られている。それでもヒナは被害にさらされる。まさにイタチごっこで、よほどの根気と執念がない限り、長年続けられる農法とは思えない。
吉田さんは自給自足を信条に、味噌はもちろん、なんと醤油やみりんまで手作りされている。合鴨はさらに9月上旬までの間飼育され、手づくり燻製の恵みとなってくれる。かつては日本人が普通に営んでいた、自然と一体となって暮らす、充ち足りた生活を垣間見ることができた。

 

知育より、生きる力の食育を

生徒数20数人ばかりの「千屋小学校」。校門から道路を隔てた二畝ほどの圃場でも、吉田さんは子どもに田植えから教え、合鴨農法でもち米を育てている。かわいい合鴨のヒナには、子どもたちの大よろこびの顔が想像できる。合鴨が稲の成長を手伝ってくれて、収穫できたもち米で餅つきをして、自分で丸めた餅をほうばるまで。育苗から一貫したほんとうの「食育」も培ってこられた。ところが今年から、学習指導要領の改善とやらで、「食育」の仕上げともいえる餅つき時間が取れなくなったと嘆いておられた。英語など「知育」時間のシワ寄せとは実に嘆かわしい。
吉田さんは養鶏場(四百羽)も営んでいて、収入の4割を占めているとか。それが基盤となって、合鴨農法や食育、自給自足を実現されていると思われる。取材時、おみやげにいただいた合鴨の燻製は、少々かたいが滋味あふれ。その後、吉田さんご夫婦が発行されているガリ版刷り「花見通信」を通じて、合鴨玄米「千代錦」、手づくり味噌と干し椎茸を注文させていただいた。
玄米には虫に食われて黒ずんだ米粒が混ざっていて、これを取り除くのに10分くらいはかかる。しかしそれが完全有機栽培米の証。テマヒマかかる農法だから、玄米炊くにもテマヒマかかってあたりまえと、得心して噛みしめている。生活者に広くそんな認識があたりまえになれば、“有機農法”がもっと脚光を浴びて“勇気”づけられると思うがいかがでしょう。

 

〈文責〉コピーライター 小山寅哉

合鴨の一斉出動はお昼のランチタイム

自作のミニ・ソーラーバッテリー

ミニ水力発電器は自転車用ダイナモを活用