おとなの食育 NO.10

“おいしい手づくり”こそ生活を豊かにしてくれる

 

朝メシ前の手づくり

「おとなの食育」の言い出しっぺで、「手づくりのススメ」を唱える張本人としましては、自ら“手づくりの手本”を示せるほどでないと説得力はなし。とはいえ、何事も本気でやろうとすると、なかなか一歩が踏み出せず、何んにもできず仕舞いなんてことに。何はともあれ、始めることが肝心。そこで「朝メシ前にやれることからやろう!」と。“買えば済む”という、消費一辺倒の生活から、“買わなくても済む”手づくり生活のあれこれを、はじめ始めた。
まずは漬け物。ほんとうは沢庵が好物だけど、いきなり糠漬となると、ちとハードルが高い。でもキュウリやナスの一夜漬けなら気楽にできそう。ただ「浅漬けの素」なんぞを使わされるのはシャクだから、塩麹(液体)と米酢を少々(これらも買わないといけないが…)ジッパーパックで軽くモミモミ。エイヤ!でできるシンプル浅漬け、簡単に始められることから始める。“おいしい手づくり生活”は、テマヒマかけず、朝メシ前にできることから、朝メシ前にやれば気楽なもの。
余談だが以前、失敗が成功の元になったこともあって。袋いっぱいの茗荷が安かったので買って見ると、なんと茗荷の「茎」だって!使ったこともない食材にトホホ、さてどうするか…迷ったあげく、甘酢漬けしかなかろうと。これがけっこう長く、薬味に重宝したという顚末。これで味をしめた訳でもないが、近況では、JA紀南の南高梅を入手。半分を醤油に漬け込んで、半分は梅酒に仕込み、今から食欲の秋を楽しみにしている。

 

テマヒマを楽しむゆとり

先日、岡山県新見市の山中で、合鴨農法を30年以上も続けている方を取材に行った。詳しいことは改めて紹介しますが、今回は取材前日に泊まった、鳥取県智頭町の友人宅でのラッキョウ漬け体験の話。私用にと鳥取ラッキョウ3キロを準備してくれ、その上作り方まで伝授いただいた。
テマヒマかけない浅漬けで自信をつけていたものの、どっこいラッキョウはテマヒマがかかる。
①下準備その一は、ニンニクなどのような塊りを一粒ずつばらし、ヘタの上下を一粒ずつ切る
②それをザルに入れ、砂状の土を2〜3回洗い流し、さらに一皮むけるまで、2〜3回もみ洗い
③たっぷりの湯を沸かし、ザルごと熱湯にくぐらせてから、ウチワで粗熱をさます
④漬け物用容器もよく洗い、きれいに水分を拭き取り
⑤ラッキョウ3キロ(ヘタや皮を取っているから2キロほどか)を、甘酢1.8ℓに漬け込む(鷹の爪、昆布少々も加える)
ラッキョウ漬けで思ったこと。食材を生かしきるには、やはりテマヒマがかかるということ。朝メシ前に手づくりをこなす知恵も実践したい。が、このテマヒマとは、「食べ物のいのちと対話する大切な時間」なのだと。コメ一粒を大切にしてきた日本人は、そんないのちとの対話を忘れ去ろうしているのではないか。「おいしい手づくり生活」を通して、ほんとうの豊かさを追求してみたい。

 

〈文責〉コピーライター 小山寅哉

 

初めての漬け物ざんまい
左から「梅酒」「ニンニク醤油漬け」「ラッキョウ漬け」「梅醤油漬け」「トマトピクルス」


※「ニンニク醤油漬け」は醤油に漬ける1週間前まで酢に漬けている状態。ニンニクの鉄分が酢に反応して緑色に変化するというオドロキも体験!